(これが……クロスバイクなの? とてもママチャリと同じ『自転車』とは思えない……)
「いえ、なんだか璃紗がずいぶん、興奮しているみたいなので……気になって」
「ちょっとしか乗ってないけど……これはいい運動になりそうよ、美夜♪」
「まだ璃紗の甘い温もりが残っている、この自転車にわたくしが乗るなんて……」
「うふふっ、どう、綾瀬美夜。特製ソフトクリームよ! 美味しそうでしょう?」
「ちょっと、玲緒。わざわざ見せびらかしに来たの?」
「もう、玲緒はお子様なんだから……美夜ちゃん気にしないで」
「璃紗が座ったこのサドルに、わたくしも今から、またがるのよね……ふふふっ、なんて甘美な瞬間かしら♡」
「綾瀬美夜、ちょっとこっちを見なさいよ。美味しそうでしょ!」
「んっ……ぺろぺろ、ちゅ♡ ああ、なんだか口の中まで甘くなってきたわ♡」
「きゃあああっ、綾瀬美夜、何勝手にワタシのソフト、食べてるのよぉ!」
「玲緒さま、ごめんなさい。もう、美夜ったらどうしたの? お腹すいてるの?」
「玲緒、あなたが見せびらかしたりするから、いけないんじゃない」
「違うわよ、綾瀬美夜の悔しがる顔、見たかっただけなのにーっ」
「じゃあ家に帰ったら、冷蔵庫のアイス食べていいから。今は我慢しなさい」
「うううっ……仕方ないわね。じゃあお風呂上りに、2本食べるから」
「イヤよ。綾瀬美夜のせいで、ワタシは傷ついたんだから、それくらい食べないと気持ちがおさまらないわ」
「まぁ、そういう食いしん坊でダメダメなところも可愛いから、今日は特別に許してあげちゃうわ」
「んふっ、んふふっ♡ 璃紗のぬくもり……璃紗の使用済み自転車……んふふっ♡」
「ブツブツ言いながら、うっとりした顔で乗ってます」
「すごく楽しそうね。普段クールな美夜ちゃんが、あんなに嬉しそうなんて……よっぽど気にいったのかしら」
「そうかも知れませんが……なんだかあの笑顔を見ていると、背中がゾクゾクするんですが」
「そういうのとはまた、違うというか……美夜、絶対ヘンな妄想をしているんだわ」
「ああ……今、わたくしは璃紗との一体感を、堪能しているわ~♪」
「そういう璃紗ちゃんも結構、テンション上がってたんじゃないかしら?」
「確かに、そうかも。今まで乗っていた自転車とは全然違って、とにかく驚きました」
「えっ? じゃあ、ちょっと失礼して……んんっ!?」
「だめっ! 麻衣さまの自転車なんだから、乱暴にしないで」
(美夜のことだから、片手でも軽々持ち上げられそうな感じはするけれど……)
「……本当に、軽いですね。ママチャリと比べると、半分くらいな気がするわ」
「そうね。普通のママチャリが18~20kgくらいなのに対して、クロスバイクは10~11kg程度なの」
「これなら、玲緒でも持ち上げられるわ。さあ、レッツチャレンジよ!」
「璃紗は悪くないわ。玲緒さまは本当にちっちゃくて、可愛らしいし」
「でしょ~♡♡ こんなちっちゃな玲緒でも持ち上げられるのが、クロスバイクよ」
「うぅっ……なんで勝手に、ワタシをネタにしているのよお!」
「玲緒さまでも持ち上げられる、クロスバイク……しっかり、メモしておきます」
「うがうが、うがぁぁぁっ!! ちっとも重要じゃないから~~っ!!」