「納車日、今週の土曜日になったから、その日にイシガミサイクルに集合ですって」
「ええ、そうね……ドキドキ、璃紗のレーパンがついに……」
(美夜ったら、クールに振る舞おうとしていても、あんなに笑顔浮かべちゃって)
「いらっしゃい、璃紗くん、美夜くん。自転車用意出来ているよ」
「まーいーっ、なんでまたワタシまで、ここに来なきゃいけないのよぉ~」
「だって……部屋で一人だと寂しいでしょう、玲緒?」
「……別に、全然。スマホのゲームしてるもん、ツメツメ」
「ツメツメ? ああ、玲緒っぽい丸いキャラを積んでいくパズルゲームね」
「そのまんまの意味よ。玲緒も璃紗ちゃんと一緒に、ダイエットしたら?」
「麻衣さまも今日は、自転車でここまで来たんですか?」
「ええ、璃紗ちゃんたちと一緒に、早く走ってみたかったのよ、ふふっ」
「ワタシはここで好きに過ごさせてもらうわ……ぱく、もぐもぐ」
「そうね……マンガの影響なのか、たまに寝言で『ケイデンス30上げますっ!』とか言ったりしてるけどね」
「興味は人それぞれだからねぇ。いつか玲緒くんにも、自転車の楽しさがわかってもらえるといいけどね」
「ちょっと待って、まだ乗っちゃだめよ、璃紗ちゃん」
「まずはフィッティングを行ってからだよ、璃紗くん」
「ハンドルやサドルの高さを、自分に合わせて調節することよ。前に私の自転車に乗る時も、やったじゃない」
「そうだよ。長時間乗るんだから、自分にとって一番楽な姿勢になるように、調整するんだ」
「璃紗の股下の長さでしたら、この『リサノート』に書いてあります」
「いや、直接サドルに腰掛けてもらって、現物合わせするつもりだったんだけど……ちゃんとメモしてあるなんて、感心だね」
「ぐっ……私でさえ知らないのに、いつそんなもの計ったのよ?」
「璃紗のことなら、なんでも知っているのよ、わたくしは」
「じゃあサドルを上げるから、自転車に乗ってみてくれるかい、璃紗くん?」
「膝が伸びている状態で、ペダルにかかとが届くようにしているんだけど……どうかな?」
「そうだよ。ハンドルが近すぎても遠すぎても、体に負担がかかるからね。ここは慎重にセッティングをするよ」
「自転車ひとつ買うにしても、色々やらないといけないことが多いのね」
「ちょっとの違いで、快適さがすごく変わるからね。これはとっても大事なことなのよ」
「じゃあ、こんな感じでいいかな。これで一度走ってみて、しっくりこなかったら、また後で調節するよ」
「お願いします。ちなみに股下は、璃紗より長いですから」
「じゃあ……サドルはこのくらいの高さでいいかい?」
(でも前は、自分の自転車選びに夢中になっていたけど……白いクロスバイクにまたがる美夜、ちょっとカッコいいかも♡)
「元々、美夜ってそこそこスポーツ出来るんだから、あっという間に乗りこなしちゃいそう……」
(美夜の姿に見惚れていたなんて……言えるわけないわよ)
「何かえっちな妄想でもしてたんでしょう、相変わらずね」
「し、してないわよ! 普段からそういう妄想しているみたいな発言、みんなの前では止めてよ」
「やめてよ、麻衣さまや皐さんがいるのに……うぅっ」
「麻衣、見なさいよ! レアキャラ、レアキャラが出たのっ!!」
「ちょっ!? なんで勝手に、人のゲーム進めているのよ」
「すごいわ……玲緒じゃ出したこともないような高得点ですね、皐さん!」
「ほら、玲緒さまのゲームに2人とも、夢中になっているわ」
「も、もう……今日は自転車に乗りに来たんだからね」