「すいたわよ。昨日からずっと麻衣は自転車ばっかりで、ワタシのことはほっぱらかしなんだから」
「もう……これはジャンボハンバーグだけじゃ済まないんだから」
「ということなんで、わたしはここで抜けるけど……いいかしら?」
「そうね。でもわたくしと璃紗の方が、もっと仲良しよね♡」
「ええ、そうよ。そうやってすぐ真っ赤になる璃紗……ああ、愛しさが止まらなくなるわ」
「もう……ほら、行くわよ! せっかくのサイクリングロードなんだから、もっと走ってこなくちゃ」
「もう、そんなに走っていたのね……あまり疲れてないし、むしろ風を切る爽快感が楽しいんだけど」
「それがまさに『ハァハァしない程度』なんじゃないかしら?」
「なるほどね……うん、じゃあここで止って皐さんが来るのを待ちましょう」
「1時間ちょっとで、ざっと500キロカロリーくらいの消費になったはずよ」
「だってだって、テレビのダイエット番組なんか見てても、ご飯1膳の消費って結構、大変そうだったりするじゃない」
「そのわりにはいつも真剣に、画面に食い入るように見ているけど……」
「璃紗くんがそんなに真剣に、ダイエットに臨んでいるのなら、良いことを教えてあげようか?」
「効率の良い脂肪燃焼のコツ、っていうのがあるんだよ」
「うん、いいよ。ちょっとしたことだけど、覚えておいて損はないと思うよ」
「コツ……なるべく空腹時に運動を行うとか、そういうことですか?」
「うん、それもあるね。食後は食べ物を消化する機能がフル回転しているから、その状態で運動をしたりするのは避けた方がいいよ」
「うん、そう。体が混乱して消化が悪くなるばかりで、気持ち悪くなったりしちゃうんだよ」
「じゃあ今日は食事前だから、ちょうど良かったんですね」
「それとできたら、運動開始の30分くらい前に、カフェインを取るのもいいよ」
「カフェイン……出てくる前に、紅茶を飲んできたわ。でもどうして、それが良いんですか?」
「カフェインにはね、血中の脂肪酸濃度を上昇させる働きがあるんだ」
「脂肪酸濃度が高くなると、脂肪酸が筋肉に取り込まれて、エネルギー源として効果的に消費されるんだよ」
「さすが皐さん。現役の看護学生の知識は凄いですね」
「はぁ、専門的なことはまだ、難しいなぁ。でも運動前にカフェイン取るのは、より効果があるってことですね」
「紅茶やコーヒーを飲んでもいいけれど、一番お手軽なのはカフェイン錠剤かもね」
「あぁん、だったら私にも、教えてくれてもいいのに……」
「ごきげんよう。こんなところで会うなんて偶然ね。ひょっとして2人は、デート中かしら?」
「はい。今、六夏さんとラブラブなデートをしていたところなんです♡」
「これはこれは、また可愛らしい2人が現れたねぇ。まるで花が咲いたようだよ」
「ううっ、またなんかキラキラしている人がいる。リサ姉の周りって、こんな人ばかりだよね」
「璃紗くん、できればこちらの可愛らしい2人を、ボクにも紹介してくれるかな?」
「はい。こちらはミカ女の後輩の、白河沙雪さんです」
「はじめまして。白河沙雪と申します。どうぞよろしくお願い致します」
「なんとも丁寧な挨拶だね。良家のお嬢様、って感じだね」
「こちら、石神皐さんよ。ミカ女の看護学校に通っていらっしゃるの」
「あっ、もしかしてここにある自転車って、リサ姉達のなの!?」
「リサ姉もスポーツサイクルに乗るんだね、知らなかったよ」
「その言い方……ひょっとして貴女も乗るの、六夏さん?」
「わーっ、すごいなぁ。こんなところに、自転車仲間がいたなんて。ふふふっ」
「ふふふっ、よくわからないけれど、なんだか楽しそうなことになってきたね~」