「ふふふ、部員もこれだけいたら、学校側に正式な部として申請できそうね」
「そうですね……ジャージに玲緒がいるなら 『玲緒っぽい自転車部』 で、いいかしら?」
「普通に 『ミカ女自転車部』 でいいんじゃないかな」
「でしたら部活の申請は一度、環境整備委員会を通しますので、私の方から学校側に申請しておきますね」
「いいえ、言い出したのは私ですから、当然です。必要書類を書いておくだけですから」
「先生から了承を得るために、部活内容を細かく説明したりするのとか……大変じゃないかしら?」
「ご心配には及びません。そういった面倒なこともすべて、私がやっておきますので」
「そうじゃなくて、わたくしは……部の申請とか面倒なことは、したくないから」
「はいはい、美夜ってそういう性格だったわね。最近、人当たりがよくなったから、ちょっと忘れていたわ」
「はあー、やっぱり沙雪さんってすごいです。リサ姉もそう思うよね?」
「でしょう! 本当に沙雪さんって、完璧な才女なんですよ……素敵です♡」
「まるで自分のことように自慢しているわね、六夏は」
「いいえ、事実ですから。本当に沙雪さんのそういう所、尊敬しているんです、ワタシ」
「フン……璃紗はもちろん、わたくしの全てを尊敬しているわよね?」
「だってわたくしの方が、他の誰よりも完璧だもの。そういうものに、人は憧れるのでしょう?」
「ああ……美夜は確かにすごいけど、その上からの物言いは、やめた方がいいわよ」
「美夜さまも、確かにすごいと思います。ですが、沙雪さんの方が……」
「またすぐ、璃紗に頼ろうとするのね。璃紗はわたくしの、わたくしだけのものだから……」
「はいはい、ストップね! 今は自転車部について話をしているのよ、美夜ちゃん、六夏ちゃん」
「いいのよ。誰にも、自分の恋人が一番だものね……それがたとえ、ちんまいわがままっ子だとしても♡」
「沙雪さん、申請書類について、みんなに聞いておきたいことがあったら、今のうちに聞いてね」
「はい。メンバーと活動内容さえしっかり書いてあれば、平気ではないかと……それでメンバーは、この……」
「あの、メンバーはこの6人で宜しいのでしょうか?」
「ボクに気を使っているのかい、優しいね、沙雪くんは」
「ボクはバイトと学校の方の実習もあったりするから、いつも来れるわけじゃないんだ。だから 『ミカ女自転車部』 のサポート役で十分だよ」
「わかりました。それでは皐さんはコーチのようなポジションだと、記載しておきますね」
「ミカ女看護学校の先輩がサポートについているって言っておけば、先生たちも安心するわよね」
「うーん、そこまでボクは、信頼されているのかなぁ」
「されてますよ。皐さんのアドバイスがあったから、私も自分にあった自転車選びができたんですから。頼りになる先輩です」
「はははっ、そこまではっきり言い切られると、さすがに照れるねぇ」
「ジャージを作ることも決まったし、後は部活申請が通れば、本格的に活動を開始できますね」
「少し前までは、一人で自転車に乗っていたなんて夢のようかも。今度はみんなと……ううん、玲緒とも一緒に走れるのね」
「ああ、玲緒が少しの距離で 『疲れたー』 を連発しながら、必死にペダルを漕ぐ姿……」
「想像しただけで、笑いあり涙ありの、感動的なシーンになりそうよね」
「しまった、頭の中で玲緒の自転車が、三輪車になっていたわ」
「それは麻衣の、勝手な妄想でしょう! このワタシが、三輪車なんて……」
「そうよね、いくら玲緒でも……あっ、でも玲緒って、自転車持っていなかったのよね」
「どんなのが、玲緒に合ってるかしらね。ヘルメット被ったら、田舎の小学生の通勤スタイルみたいじゃない」
「うきーっ、麻衣ったらさっきから、人をばかにしてー」
「玲緒さま、とってもちっちゃいですけれど……そんな玲緒さまが乗れるクロスバイクって、あるんですか?」
「しっ、篠崎六夏ぁぁ! アンタ今、なんて言ったの」
「ワタシの胸がちっちゃいですってー、よくもよくも! アンタだって、ぺったんこのくせに」
「わ、ワタシはそういう意味で言ったんじゃなくて……」