「璃紗さんに、美夜さん……教室にいらっしゃらないと思ったら、中庭でランチをされていらっしゃいましたのね」
「いいえ、よくご覧になって。他にもいらっしゃいますわよ」
「まあ、玲緒さまに、麻衣さま……他にも先日、イベント委員に選ばれた、沙雪さんに六夏さんもいらっしゃいますわ」
「すごいですわ~ なんて豪華なメンバーなのでしょう♪」
「放課後は何かと、皆さんお忙しいかと思いまして、昼休みに集まって頂きました。ですが場所の選択、間違えてしまったでしょうか?」
「うーん、このメンバーじゃ、どこで集まっても変わらない気はするわね」
「美夜さまのお弁当って、重箱に入っているんですか?」
「何よ、目立とうとしちゃって。そんなのぜんぜん、羨ましくないもんね」
「あら、そうですか? 玲緒さま、よだれがたれていますよ」
「玲緒さま、もしお昼が足りないのでしたら、ワタシのパンを食べますか?」
「アンタ、なかなか礼儀を知ってるじゃない。頂くわ、もぐもぐ……」
「ひぃ、はぁ、はぁ、し、篠崎六夏、なによこれっ!!」
「あれっ、美味しくないですか? 辛さ3倍カレーパンですけれど……今日は大好きな『10倍』が買えなくて、ちょっと甘めなんですよ」
「あ、あんた、ばかなんじゃないのぉ!! まいー、ジュース!!」
「はははっ……確かにこれじゃ、どこにいても目立つわね」
「美夜さま……あの量を、こんな短時間で……本当に、すごい」
「食事も終わったようなので、自転車部のミーティングを始めたいと思います」
「いえ、それで早速、一つ決めなければならないことがありまして」
「今後、予算委員にも出たりしなくてはならないので、早めに決めておいた方がよろしいと思います」
「わかったわ。だったらここは、皆さんで自転車勝負をして……」
「だって美夜、別に部長なんて興味ないんでしょう? ただ勝負したいだけなんでしょう??」
「私も麻衣さまが良いと思います。この中で一番、自転車の知識もおありですし」
「わたしでいいの? みんながそう言ってくれるのなら、いいけど……」
「だったら副部長は、玲緒を指名しても良いかしら?」
「ですがジャージには、玲緒さまのイラストも入りますし……副部長といえば、部の象徴みたいな感じですし」
「そうよ。玲緒といえば 『ミカ女自転車部』、『ミカ女自転車部』 といえば玲緒、みたいな感じで、みんなの注目の的になるのよ」
「ふふふっ、やる気になって来たわね……あと少しね」
「な、なによ、綾瀬美夜! 勿体つけないで、続きを言いなさいよっ」
「予算委員に出たものだけが食べられる、幻のスイーツがあるとかないとか……」
「クリームみたいに真っ白で、カステラみたいに四角くて……」
「はうぅぅ……わかった、やるわ! ワタシ副部長やるからね、麻衣」
「予算委員でそんなお菓子なんて、出ないでしょう。環境整備委員の沙雪さんだって、知らないのに」
「あら、わたくしはあるとかないとかって、言っただけよ」
「明日ジャージも出来上がるので、また集まって頂けますか」
「ええ、楽しみだわ。それじゃ皆さん、ごきげんよう」
「ああっ、ちょっと美夜、教室と反対方向に行こうとしないっ!!」
「ミカ女の制服のカラーをベースに、麻衣さまと玲緒さまのシルエット、そして舞い散る花びらをイメージしてみました♪」
「それはちょっと、女子としてダメじゃないかしら……」
「ほら見て。玲緒のイラスト、すっごく可愛いわよ♡」
「玲緒さまのファンが見たら、ぜったいに欲しがりそうですよね」
「……はっ! このイラストでグッズを作れば、新たなビジネスが……」
「そ、そうね……って、後でライセンス契約の連絡を取ろうかしら……」
「じゃあとりあえず今度の休日、みんなでどこかに走りに行きましょうか?」
「六夏は以前から、自転車に乗っていたんでしょう。どこか知っている?」
「ワタシはその日の気分で走って、あんまり目的地は決めてないから……」
「そうなのね……麻衣さま、どこかお勧めありますか?」
「そうね……だったら、荒川サイクリングロードはどうかしら」
「ついにこの日が来たのね。『自転車』 で、ポタリング♪」
「璃紗、本当に嬉しそうね。昨夜は遠足前の子供みたいだったわよ♡」
「そりゃ、確かに楽しみだったけれど……でもどうして、学校に集合なのかしら?」
「待ってよ、美夜……あっ、もうみんな、来ているわね」
「まだ来てないんだよね。こういう時はいつも、一番に来ているのになぁ」
「麻衣さま、今日は荒川に行くのに、どうして学校に集合だったんですか?」
「それがね、昨夜、沙雪さんから電話があって、急遽そうして欲しいって言われたのよ」
「これは自転車運搬用のトラックね。自転車競技の盛んな学校や、プロチームとかが使うヤツよ」
「わざわざ沙雪さんが、ご用意してくれたんですね……さすがです」