「皆さん、お忙しいところ、わざわざお呼び立てして、申し訳ありません」
「全然平気よ。ここのところ、イベント委員の仕事もないし」
「そうでしたか……美夜さま、申し訳ございませんでした」
「もう! 美夜は天才なんだから、仕事なんでちゃっちゃと終わらせられるでしょう?」
「天才……そうね、その通りね。璃紗もようやく、わたくしの偉大さがわかってきたようね」
「美夜くんはその年で、もう仕事をしているのか。感心だねぇ」
「そうですね。ではまず、皆さんの注文が済んでから、ゆっくりお話しさせて頂きますね」
「六夏、このケーク・サレだったら、そんなに甘くないわよ」
「塩味のケーキのことですよ、チーズや野菜などが入っていて、味は少しキッシュと似ていて、美味しいですよ」
「だって……毎日、自転車で走っているもの。それにシフォンケーキは、他のケーキと比べるとカロリーも控えめなのよ」
「ふーん、じゃあわたくしは、モンブランとミルフィーユと……それに、フルーツタルトと……」
「ううっ……何よ、あてつけがましく、カロリーの高いものばかり……」
「もぐもぐ……ねぇ篠崎六夏、そのケーク・サレって本当に甘くないの?」
「ええ、そうですよ。玲緒さま、良かったら一口どうぞ」
「じゃあ、頂くわ。ぱくっ……うん、悪くないわね。これと甘いケーキ交互に食べたら、飽きずにずっと食べられそうだわ」
「あ、あの……そろそろ、お話をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「はっ、そうだった。沙雪さんの話を聞く為に集まったのよね」
「そうね。じゃあみんな、一旦食べるのをやめましょう」
「そんな、あらためられても、困りますが……私は一つ、皆様にご提案したかったんです」
「ほうほう、沙雪さんすっかり自転車にハマったのね」
「はい、皆さんに自転車を教えてもらってからというもの、家の敷地で毎日練習をしておりまして」
「家の敷地で、練習できちゃうんだ……さすがお金持ち」
「わたくしの家の庭でも、自転車と言わず、車の運転だってできるわよ」
「それで、とても自転車が好きになって……六夏さんはもちろんですが、皆様とも一緒に走れたら、もっと楽しいのではないかと思いまして」
「部と言っても、沙雪さんが言っているのは、同好会みたいなものでしょう?」
「はい。スポーツとしてではなく、皆さんと楽しむような感じです」
「あくまでダイエットや、軽いポタリングを楽しむくらいって考えればいいのかしら?」
「その話、前もちらっと聞いたけれど、自転車でダイエットができたりするんですか?」
「もちろんよ。璃紗ちゃんは最初、それが目的で自転車を始めたのよね?」
「そっか。でもリサ姉、全然太ってなんて見えないよ」
「見えないところに、お肉がついているのよ。六夏さんの見たことがない所に……このわたくししか、見られないところにね♡」
「ちょ、ちょっと美夜、止めてよっ! もうその手の話はおしまい!!」
「もう……だからね、六夏にも、いかに自転車がダイエットに向いているのか、教えてあげるわ」
「ふむふむ、なるほど……だから最初に、リサ姉たちとサイクリングコースを回った時、脂肪燃焼がどうとか言っていたんだね」
「うん。ワタシ、今まで何も考えないで、ひたすらスピード重視で自転車に乗っていたよ」
「お恥ずかしいことですが、私、ポタリングも実はあまりよくわからないまま、会話に参加していたのですが……」
「ポタリングは沙雪さんが最初に言っていたみたいに、みんなで一緒に自転車に乗って、軽くお出かけすることよ」
「自転車で散歩したり、観光地をめぐったりするようなことね」
「見知らぬ街を、自転車散歩……なんだか素敵ですね」
「そうですね。鎌倉とか、ちょっと遠いけど京都とか、楽しそうかも」
「みんなで目的地を決めて、出かけたりするのって、すごくいいかも。私『自転車部』作るの、賛成です」
「あら、人と関わるのが苦手な美夜が、あっさり賛成するなんて……」
「だって……本格的な部になったら、璃紗がいつもレーパンで……
ふふふっ♡」
「こうなってくると、イベント委員のみんなにも、入ってもらいたいけれど……」
「実は環境整備委員会の時、七海さまにも声をかけてみたのですが……」
「今、委員長の仕事が大変お忙しいらしく、余裕がないとのことでした」
「そうかぁ……七海さんがダメなら、優菜さまも無理っぽいわね」
「ええ、優菜さまは常に七海さまのお傍に、ついていたいようです」
「紗良さんと楓さまは、芸能界のお仕事が忙しいみたいで、学校も最近、休みがちだし……」
「エリスさまと雫さまは、最近バイトを始めたって言っていたわ」
「ええ、社会勉強になるからって……すごく頑張っていらっしゃるみたいだわ」
「キミたちには他にも、たくさん友達がいるんだね……会えなくて残念だよ」
「それではまずは、ここにいらっしゃるメンバーだけで……」