「さて、試乗も済んだことだし……ちょっとれーおー、こっちに来て」
「何よ、麻衣……自転車ならワタシ、乗らないし、持ち上げないわよ」
「どっちもしなくていいわ。玲緒のカバンの中に、お茶とお菓子が入っているのよ。みんなでお茶しましょう」
「なぁんだ。そういうことなら、参加してもいいわ……」
「って、ワタシずっと荷物持ち、させられていたの!?」
「むきぃぃっ!! なんかだまされた感が……悔しいっ!」
「まあまあ。玲緒の好きなバナナケーキも入ってるから」
「璃紗ちゃんも美夜ちゃんも、遠慮せずどうぞ。お菓子もたくさんあるわよ」
「そういうと思って、璃紗ちゃん用にちゃんと、低カロリーのお菓子も持ってきたから」
「美味しそう。それじゃ、私も……もぐ、んっ……これってもしかして麻衣さまの手作りですか?」
「これ、とっても美味しいです♪ ゴマのクッキーなんですね」
「そうよ。余った卵白を使って作ったの。バターも使ってないから、カロリーも押さえられるし」
「なるほど……しかもゴマが香ばしいわ。私にこの作りかた、教えてください」
「それも美味しいけど、ワタシはこっちのフルーツケーキの方が好きかも。なんか変わった味がするし」
「玲緒さま、それはきっとラム酒の味だと思います、ふふふっ」
「そ、そう……ラム酒ね。もちろんわかっていたわよ。ちょっとど忘れしただけよ」
「あら、そうですか。ですが玲緒さまには、刺激が強すぎるんじゃないですか?」
「そんなことないわ、綾瀬美夜。ワタシはアンタたちより年上なんだから、大人なワタシにぴったりよ」
「私も麻衣さまを見習って、低カロリーなものをもっと、作るようにしようかな」
「とりあえず今は、自転車ダイエットだけに絞った方がいいんじゃないかしら」
「そんなあっちもこっちも手を付けはじめて、最後にはリンゴしか食べないとか言いだすんじゃない?」
「そうね……璃紗ちゃんって真面目だから、極端から極端に行きそうな感じはするわね」
「ふふふっ、みんなが話に夢中になってる隙に、お菓子全部食べちゃおうっと。もぐもぐ、もぐっ」
「ともかく、ダイエットメニューはやめて欲しいわ。わたくしのハイ・パフォーマンスを維持するには、高カロリーが必要なのよ」
「それって結局、美夜が低カロリーのものを食べたくないだけなんじゃない!」
「いいえ、わたくしは璃紗のためを思って言っているのよ」
「まぁまぁ。とにかく今は、自転車に慣れることが先じゃない?」
「そうでした。今日、少し乗ってみてわかったんですが、こんなに軽いならあっという間に遠くまでいけそうですね」
「ええ。姿勢が違う分、疲れづらいし、長く乗れるわね」
「その通りよ。1時間でも、わりと遠くまで行けちゃうのよ」
「璃紗にわかりやすく説明すると、私鉄の駅なら20駅くらいかしら」
「だったらその感動を、キスで表現しても良いわよ♡」
「まあ、当たってるわ。まあ今までの会話を聞いていたら、誰でもわかるわよね」
「ふん、ワタシだって最近、電車に乗るようになったから詳しいもん、えへん!」
「くっ……たまには美夜も、車はやめて電車に乗らない? 渋滞もないから、快適よ」
「あんな人の多いところ、イヤよ……あっ、もしかして電車の中で、璃紗を触り放題なんていう、痴漢プレイがしたいのかしら?」
「やっぱりあるのね、んふふっ。だったら一緒に乗るわ」
「綾瀬美夜は電車に乗れないのね……それってワタシの勝ちだわ、にやり」
「そこで小さな勝利に酔いしれないの。玲緒は人間的に小さいから、仕方ないかもしれないけど」
「でも、電車でも車でもなく、自分の足でそんな距離を移動出来るなんて、やっぱりすごいわ……自転車ダイエット、いいかも」
「そうね、自分の力だけですごく遠くまで行けちゃう達成感……これもスポーツサイクルの魅力なのよ」
「ふぅん……璃紗の目がかなり、本気モードになってきたわね」
「いいことだわ。じゃあ思い切って、一緒にサイクルショップに行ってみましょうよ」
「サイクルショップ……ああ、私もついにスポーツサイクルデビューなのね、うふふ」
「今度はなんか、妄想モードに入ったわ……多分きらきらの光の中で、颯爽と自転車を飛ばす自分でも夢見ているんじゃないかしら」
「璃紗ちゃんって、しっかりしてそうで結構、夢見がちなのねー」