「い、いいわよ、別に……そんなわけのわからない部」
「玲緒さまにも、もっとわかりやすく説明した方がいいのかしら?」
「でも、まだ始めていない部を説明するなんて……璃紗にできるの?」
「できるわよ。みんなで楽しく、ポタリングするんでしょう?」
「どうにも……覚えたての『ポタリング』という言葉が、使いたいだけに見えるんだけれど」
「最初はサイクリングロードのあるところを、走るのがいいんじゃないかい?」
「まぁ、そうですね。集団で走ることになるわけだからね」
「わたくしの鮮やかな走りが、一番人目を惹いてしまうことは、間違いないでしょうけど」
「でもきっと、沙雪さんの走りが一番、素敵だと思います♡」
「まぁ、六夏さんったら♡ それでしたら、六夏さんの方が、華麗な走りを……」
「この子たち、わたくしの話を聞いていたのかしら?」
「まぁまぁ。私はともかくとして、みんなミカ女の人気者たちだから、同じ学校の学生たちに見られたら大騒ぎでしょうね」
「イベント委員で、何かしているって思われるかもね」
「地道に活動していれば、そのうち自転車部なんだって、認知されると思うよ」
「そのことについても私、考えていることがありまして……発言しても、よろしいでしょうか?」
「自転車部をせっかく作るのですから、皆さんお揃いのユニフォームのようなものを作りませんか?」
「お揃いのジャージかぁ、うんうん、いいかも! 部活っぽいよね」
「そうね。人の多いところで走っていても、同じ格好ならすぐに見つけられるわよね」
「チームジャージってワケだね。ナイスアイディアだよ、沙雪くん」
「いいえ、まだそこまでは……皆さんで決めるのが良いかと思いまして」
「頭の中にあるイメージを、デザイン画にして描いてみてはどうですか、六夏さん」
「その方がいいね。筆記用具。ボクのを貸してあげるよ」
「私のじゃなくて、みんなも着るやつだからね、美夜」
「では、六夏さんに似合いそうなデザインにしましょう」
「六夏、子供の頃からお絵かきって、苦手だったもんね……ふふふっ」
「きゃあ! なによ、急に後ろからのぞき込んだりして」
「この全体を、マカロンみたいな色合いにして、リボンをつけるとか、ユニコーンの刺繍を入れるとか……まさかこれ、本気じゃないわよね?」
「璃紗以外は、これを着るのはバツゲームね、拷問ね」
「リサ姉や沙雪さんなら、良いかもしれないけど……ワタシはちょっと、キツいかも」
「うぅっ、六夏は少しオブラートに包んで、モノを言うのを覚えなさいよ」
「ごめん、リサ姉。ところで美夜さまは、どんなのを描いたのですか?」
「こ、これって……ジャージにしては、露出が多くない?」
「ふふふっ、露出が多い方がいいじゃない。走ったら暑くなるんだし」
「このジャージを着た、沙雪さんの姿……目を閉じて、よーく想像して御覧なさい」
「えぇっ、それは……ドキドキ………………わぁぁっ~~!!」
「は、鼻血が出そうです……はぁ、はぁ、美夜さま、危険すぎます……」
「もう、ウブな六夏をからかわないで! こんなデザイン、普通に考えても無理に決まっているじゃない」
「うーん……それぞれ個性があって、素晴らしいね。だけどもっと、シンプルな方が良いと思うよ」
「ほら玲緒、みんなでお揃いのジャージを作る話まで出ているのよ。楽しそうじゃない?」
「……いいわよ。どうせ変なデザインになりそうだし」
「変なデザインも、部活ならではって感じで、いいじゃない」
「六夏、横から口を出しちゃだめよ。今、麻衣さまが必死に玲緒さまを誘っているんだから」
「休日みんなで遊びに行くのに、一人だけ見学だったら、つまらないでしょう?」
「なんでもかんでも、それで済ませちゃだめよ、玲緒。なんでそんなに、自転車を嫌がるのかしら?」
「玲緒さま、そんなに自転車、お嫌いなんでしょうか?」
「な、なによ! みんなワタシのことをそんな目で見ないでよ。違うわ、乗れるわよ、自転車くらい」
「むむぅ、麻衣のばかーっ! 違うって言ってるでしょう」
「ええ、あんなの簡単よ。ワタシ、自転車なんて得意中の得意なんだから!」