「悩ましげな声を出しちゃって、璃紗ったら……もしかして、わたくしを誘っているのかしら?」
 
		
			
				「ち、違うわよっ! こうして見ると、自転車って色々と種類があると思って」
 
		
			
				「街中でも、こういう自転車に乗ってる人、最近良く見かけない?」
 
		
			
				「わたくしみたいなキャラが出てくると思ったのに、いなかったわ」
 
		
			
				「あら、璃紗が好きな話なら、わたくしみたいな天才で黒髪美人のキャラがいるのは、当たり前じゃないかしら?」
 
		
			
				「はぁ~……どこからツッこんでいいのかわからないわ。ここはもう話題を変えないと」
 
		
			
				「皐さん、クロスバイク以外の自転車ってどこが違うのか、教えてもらえませんか?」
 
		
			
				「いいよ。じゃあ初心者向けに、わかりやすく説明するね」
 
		
			
				「まずは、キミたちがママチャリと呼んでいるのは、業界的には『シティサイクル』という車種になるね」
 
		
			
				「買い物や短時間の利用なら、これで十分だよ。生活に密着しているから、一番普及しているんだ」
 
		
			
				「一家に一台はありますもんね、シティサイクルって」
 
		
			
				「ただ、長時間座るとお尻が痛くなるから、長距離の移動には向いていないんだ」
 
		
			
				「そっか……でも弱ペタの主人公は最初、ママチャリで千葉からアキバまで……」
 
		
			
				「だから、あれはマンガだからよ。それにいきなりインターハイで優勝しちゃうような超人キャラなんだし」
 
		
			
				「なんとなく、知ってます。山道や、デコボコした道を走りまわったりする自転車ってイメージがありますね」
 
		
			
				「そうだね。その為、2インチ……約50ミリ幅の太いタイヤを使用しているんだ。フレームも太くて、頑丈に出来ているし」
 
		
			
				「さらには、オートバイと同じ仕様のディスクブレーキやサスペンションが付いているモノもあるんだ」
 
		
			
				「確かにこれなら、どこにでも行けちゃいそうですね」
 
		
			
				「そうね。でも舗装路を長時間走ることは想定していないのよ。だから……」
 
		
			
				「普通の街中では、使いづらいってこと……ですか?」
 
		
			
				「あら、こどぶき屋のシュークリームじゃない。ヒマだから頂くわ……もぐもぐ、ぱく……」
 
		
			
				「じゃあ……皐さん、このカッコよくて、高そうなのは?」
 
		
			
				「そう。ロードバイクは今、幅が23ミリのものが主流なんだ」
 
		
			
				「軽くて高剛性なフレームに細いタイヤ、ドロップハンドルが、この自転車の特徴だよ」
 
		
			
				「舗装路では間違いなく、これが最速になるね。長距離、長時間乗るのにも適しているよ」
 
		
			
				「美夜ちゃん、あんまり玲緒を甘やかさないで、おバカになるから」
 
		
			
				「何よぉ、麻衣! だってヒマなんだもん、食べなきゃやってらないわ」
 
		
			
				「だったら玲緒もみんなと一緒に、自転車の話を聞いていればいいのに」
 
		
			
				「そうなんだ、なかなか物知りなおチビちゃんなんだねぇ」
 
		
			
				「まったく、適当なことばっかり言って……じゃあ、ロードバイクとクロスバイクの違いってなに?」
 
		
			
				「はっはっは、理論をわかっているなら十分だよ。うんうん賢いなぁ、玲緒くんは」
 
		
			
				「まぁまぁ、麻衣さま。ここはわたくしにお任せください」
 
		
			
				「玲緒さま、もし退屈でしたら、これでもいかがですか?」
 
		
			
				「弱ペタ、シャカリチなど、各種自転車漫画がそろっています」
 
		
			
				「美夜……遅くまで何か読んでいると思ったら、これだったのね」
 
		
			
				「これを読むだけでも結構、基礎知識はわかるようになりますよ。良かったらどうぞ」
 
		
			
				「玲緒さま、少しは自転車に造詣がありそうですし、これでさらに知識を深めてみてはどうですか」
 
		
			
				「……ふん、わかってるじゃない、綾瀬美夜。そうね、そんなに言うなら読んであげてもいいわよ」
 
		
			
				「わかったわ。じゃあみんな、ワタシの読書の邪魔、しないでよね」
 
		
			
				「やっと静かになったわね。美夜ちゃん、皐さん、ありがとうございます」
 
		
			
				「わたくしも、たまたま本を持っていただけですから」
 
		
			
				「美夜ったら、いつの間にあんなに本、用意してあったの?」
 
		
			
				「何かあった時のために、車の中に積んでおいたのよ。いいこと璃紗、わたくしは常に一手先を考えているのよ」
 
		
			
				「そうなんだ……というか、そのためだけに、お店の横の駐車場に美夜の家の車を停めていたのね」
 
		
			
				「キミたちの仲の良さは微笑ましいけど、そろそろ続きを話してもいいかい?」
 
		
			
				「マウンテンバイク、ロードバイクときて、最後は『クロスバイク』だよ」
 
		
			
				「これについては、わたしからも少しだけ説明したわよね? 覚えてる」
 
		
			
				「シティサイクルと比べたら、車体も軽く長距離向きだってことですよね」
 
		
			
				「ロードバイクも長距離向きだって、さっき言っていましたね」
 
		
			
				「ああ、クロスバイクは、マウンテンバイクのフレームに、ロードバイクのタイヤを付けた、中間的な車種になるんだ」
 
		
			
				「ハンドルは初心者にも扱いやすいフラットバー。タイヤの太さもロードバイクよりはやや太めの30ミリ前後のものが付いている」
 
		
			
				「だから初心者も、楽に乗れる……そんな訳で、体力作りやダイエットが目的なら、クロスバイクがオススメだよ」
 
		
			
				「なるほど……だから、やっぱりクロスバイクがオススメなんですね」
 
		
			
				「美夜、座ってなさいってば……じゃあ、皐さんに言われた通りに探してみますね」
 
		
			
				「ああ……ちょっと待って。キミの身長に合ったものを、いくつかチョイスするよ」
 
		
			
				「それと……これと、これかな。キミの身長にあう自転車は」